「飛行機の中で、子どもが耳を痛がったらどうしよう」
初めて子どもと飛行機に乗る方から、よく聞かれる心配のひとつです。
特に赤ちゃんや小さな子どもは、「耳がつまった」「耳が痛い」とうまく伝えられません。機内で泣き出しても、その原因が耳の痛みなのか、眠さや空腹なのか分からず、保護者の方が焦ってしまうこともあります。
けれど、飛行機に乗る前に鼻の状態を整え、気圧が変わるタイミングに合わせて飲み込む動作を促すことで、耳の不快感を軽減できる可能性があります。
この記事では、現役CAとしての経験と、2人の子どもと飛行機に乗ってきた母親としての実体験をもとに、子どもの年齢に合わせた耳抜き方法を紹介します。
※この記事は一般的な情報をまとめたものです。強い鼻づまりや耳の痛み、中耳炎などがある場合は、搭乗前に小児科や耳鼻科へご相談ください。
飛行機に乗ると、なぜ耳がつまるの?
飛行機の機内は気圧が調整されていますが、地上とまったく同じ気圧ではありません。
飛行機が上昇すると機内の気圧は下がり、着陸に向けて降下すると機内の気圧は上がっていきます。この気圧の変化に対して、耳の内側にある中耳の圧力をうまく調整できないと、耳がつまったように感じたり、痛みが出たりします。
耳の中と鼻の奥は「耳管」という細い管でつながっています。飲み込む、あくびをする、口や顎を動かすといった動作によって耳管が開くと、耳の内側と外側の圧力を調整しやすくなります。
耳がつまりやすいのはいつ?
耳抜きを意識したいのは、飛行機が上昇しているときと、着陸に向けて降下しているときです。
特に耳がつまりやすく、痛みが出やすいのは着陸前の降下中です。
飛行機は着陸態勢に入るよりも前から、時間をかけて少しずつ高度を下げていきます。そのため、「まもなく着陸します」という案内を聞いてからではなく、少し早めに耳抜きを始めるのがポイントです。
機内モニターがある場合は、フライトマップなどに表示されている到着予定時刻を確認し、着陸予定時刻の20〜30分ほど前を目安に、授乳や飲み物、食べ物を準備しましょう。
ただし、表示される到着予定時刻は、天候や空港の混雑状況などによって変わる場合があります。時間だけでなく、次のような機内の変化も目安にしてください。
- 機内モニターで高度が下がり始める
- 到着予定時刻まで30分前後になる
- 着陸に関する機内アナウンスが流れる
- 客室乗務員が機内の片づけを始める
- テーブルや座席を元の位置へ戻す案内がある
- シートベルト着用サインが点灯する
「着陸態勢に入ります」と案内されるころには、すでに降下が進んでいることがあります。耳を痛がりやすい子の場合は、その案内を待たず、到着予定時刻や機内モニターの高度を見ながら、少し前倒しで耳抜きを始めると安心です。
授乳に必要なものや飲み物、お菓子は、着陸前にすぐ取り出せる場所へ準備しておきましょう。
全年齢共通|気圧が変化する前に鼻の通りを整える
耳抜きの方法を試す前に、まず確認しておきたいのが子どもの鼻の状態です。
風邪や花粉症などで鼻がつまっていると、耳と鼻の奥をつなぐ耳管が開きにくくなり、普段より耳がつまりやすくなることがあります。
そのため、飛行機が上昇・降下して気圧の変化が起きる前に、できる範囲で鼻の通りを整えておきましょう。
- 離陸前に鼻をかむ、または鼻水を取る
- 着陸に向けた降下が始まる前にも、必要に応じて鼻をかむ
- 自分で鼻をかめない子は、搭乗前に普段使用している鼻吸い器などで鼻水を取っておく
- 花粉症などで処方薬を使用している場合は、医師の指示どおりに使用する
鼻吸い器は機内で使うことを前提にせず、自宅や空港など、落ち着いてケアできる場所で使用するのがおすすめです。
機内では、降下が始まる前に鼻水が出ていないかを確認し、自分で鼻をかめる子には早めに声をかけておきましょう。
強い鼻づまりや耳の痛み、発熱、中耳炎などがある場合は、搭乗してよい状態か、事前に小児科や耳鼻科へ相談してください。
全年齢共通|飲み込む動作で耳抜きをする
耳抜きで大切なのは、「飲み込む動作」を促すことです。
飲み物だけでなく、お菓子や軽食を食べる、キャンディをなめる、ガムをかむ、つばを飲み込む、あくびをする、口や顎を大きく動かすといった方法でも耳抜きを助けられます。
子どもが機内で食べ慣れていて、飲み込みやすいものを用意しておきましょう。キャンディやガムなどは誤嚥の危険があるため、子どもの年齢や発達に合わせて判断し、必ず保護者が見守りながら与えてください。
耳抜きのために普段食べたことのないものを機内で初めて与えるのではなく、食べ慣れたものを選ぶと安心です。
0歳|授乳で耳抜きをする
0歳の赤ちゃんには、授乳による耳抜きが取り入れやすい方法です。
母乳やミルクを吸って飲み込む動作によって、耳管が開き、耳の内側と外側の圧力を調整しやすくなります。普段からおしゃぶりを使っている場合は、おしゃぶりを吸うことも耳抜きの助けになります。
ポイントは、離陸前や着陸のかなり前に、母乳やミルクをすべて飲み終えてしまわないことです。特に耳が痛くなりやすい着陸前に授乳できるよう、時間を調整しておくと安心です。
ただし、安全上の理由から、離着陸時に授乳できる姿勢や方法は、航空会社や使用するチャイルドシートなどによって異なる場合があります。機内ではシートベルト着用の案内と、客室乗務員の指示に従ってください。
授乳のタイミングが合わなかったり、赤ちゃんが眠っていたりすることもあります。時間を厳密に合わせようとしすぎず、赤ちゃんの様子に合わせて行いましょう。
1歳ごろから|飲み物で耳抜きをする
1歳ごろからは、ストローマグや水筒など、普段使い慣れている方法で飲み物を飲ませます。
耳抜きのために、一度にたくさん飲ませる必要はありません。気圧が変化している間に何度か飲み込む動作ができるよう、少しずつ飲ませるのがポイントです。
機内で初めて使う容器ではなく、子どもが普段から自分で飲めるものを持っていくとスムーズです。
なお、飛行機の中では気圧の変化によって、ストローマグや水筒を開けたときに中身が噴き出すことがあります。開けるときは飲み口を子どもの顔や周囲の人へ向けず、ゆっくりと圧を逃がしてから使いましょう。
寝ている子は耳抜きのために起こすべき?
眠ったまま、耳を痛がることなく着陸できる子もいます。
一方で、起きていた方が、飲む、飲み込む、あくびをするといった耳抜きの動作を促しやすくなります。
過去に飛行機で耳を痛がったことがある子や、搭乗日に鼻がつまっている子は、降下中に飲み物を飲めるよう、起こすことも検討しましょう。
ただし、気持ちよく眠っている子を必ず起こさなければならないわけではありません。子どもの体調や過去の様子を踏まえて判断し、耳を押さえる、顔をしかめる、急に泣き始めるなどの様子がないか見ておくと安心です。
子どもが耳を痛がったときの対処法
機内で子どもが耳を痛がった場合は、まず慌てず、飲み込む動作を促します。
- 飲み物を少しずつ飲ませる
- 食べ物を食べてもらう
- つばを飲み込むよう促す
- あくびをして見せる
- 口を大きく開けてもらう
- 顎を左右に動かしてもらう
小さな子どもは「つばを飲み込んで」と言われても、うまくできないことがあります。その場合は、飲み物や食べ物を使って、自然に飲み込めるようにしてみてください。
客室乗務員へ相談することもできます。ただし、客室乗務員は診断や治療を行うことはできません。飲み物の用意など、機内で対応可能な範囲でのお手伝いになります。
シートベルト着用サインが点灯しているときや、揺れが予想されているときは、安全上、客室乗務員がすぐに対応できない場合があります。必要なものは、できるだけ降下前に手元へ準備しておきましょう。
温めると耳の痛みが和らぐことも
着陸後も耳の違和感や軽い痛みが残っている場合は、温かいタオルなどを耳の周辺に当てると、痛みが和らぐ可能性があります。
ただし、温めれば必ず耳の圧力が抜けるわけではありません。飲み物を飲む、つばを飲み込む、あくびをする、顎を動かすといった方法もあわせて試してみてください。
大人向け|バルサルバ法
子どもに付き添っている大人も、飛行機の中で耳がつまることがあります。
大人の耳抜きには「バルサルバ法」という方法があります。CAも、風邪気味のときや花粉症の時期など、耳がつまった際に行うことがある方法です。
バルサルバ法のやり方
- 口を閉じる
- 指で鼻をしっかりつまむ
- 鼻から息を出すように、やさしく圧をかける
耳が「ポン」と抜けるような感覚があれば、圧力が調整された目安です。
強く息を押し出すと耳に負担をかける可能性があるため、力任せに行わないでください。痛みを感じた場合は、すぐに中止します。
この方法は力加減や動作が難しいため、この記事では大人向けの方法として紹介しています。子どもに無理に行わせたり、保護者が子どもの鼻をつまんで行ったりしないでください。
花粉症や風邪気味のときは注意
花粉症の時期や風邪気味のときは、鼻の粘膜が腫れたり鼻水が増えたりするため、普段より耳がつまることがあります。
自分で鼻をかめる場合は、離陸前や降下前に鼻をかんでおきましょう。
花粉症などで普段から点鼻薬やアレルギー薬を使用している場合は、医師や薬剤師の指示どおりに使用してください。飛行機で耳が痛くなるのを防ぐ目的で、子どもへ市販の点鼻薬や鼻づまりの薬を自己判断で使用することは避けましょう。
強い鼻づまりや発熱、耳の痛みがある場合、または中耳炎と診断されている場合は、搭乗してよい状態か、事前に医師へ相談してください。
着陸後も耳の痛みが治らないときは?
飛行機を降りた後もしばらく耳がつまったように感じることはあります。多くの場合は、飲み込む、あくびをする、顎を動かすなどの動作を続けるうちに、徐々に改善していきます。
ただし、次のような症状がある場合は、耳鼻科などの医療機関へ相談してください。
- 強い耳の痛みが続く
- 聞こえにくさが改善しない
- 子どもが長時間激しく泣き続ける
- 帰宅後も耳を頻繁に触る、気にする
耳を痛がる原因が、飛行機による一時的な気圧変化だけとは限りません。症状が強い場合や長引く場合は、無理に自宅で耳抜きを続けず、医療機関へ相談しましょう。
子どもの耳抜き対策まとめ
子どもの耳抜きで大切なのは、「絶対に耳を痛くさせないようにしなければ」と焦ることではありません。
- 気圧が変化する前に、鼻の通りを整えておく
- 0歳は授乳、1歳ごろからは飲み物を準備する
- 食べ物など、飲み込む動作を促せるものを用意する
- 特に着陸前の降下中は、少し早めに耳抜きを始める
耳抜き用の飲み物や食べ物は、着陸前にすぐ取り出せる場所へ入れておくことも大切です。
子どもが機内で泣くと、保護者の方も焦ってしまうと思います。しかし、耳抜きがうまくできずに泣くことは、決して珍しいことではありません。
「泣かせないこと」を目標にするのではなく、何が起きても慌てずに対応できるよう、事前に準備しておきましょう。
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